肩を耳より後ろに引く姿勢で、格段にうまくなる
誤った考え方
私は、クライミングを始めてからずっと誤った考え方でいました。
クライミングを始めたころ、ジム内の他の人が登るのを見たり、インターネットのクライミングサイトを見たりして、登り方を勉強していました。
登るときは、力を抜くこと。なるべく脱力して、無駄な力を使わないように、力を温存するようにと教えられてきました。
クライミングを始めたころは、特に、スムーズな登り方を知らず、腕を曲げた状態で登ったり、入れる必要のない無駄な力を出したりしがちでした。
ですので、腕を伸ばして脱力して上る、不要な力はなるべく出さずに登ると、インターネットサイトで書かれていたり、ジムの上手い人が登るのを素人目で見ると、「なるほど全身脱力は効率が良さそうだな」と解釈し、それを実践していました。
だいぶしばらくの間、無駄な力を使わない脱力クライミングを行ってきました。つい最近までです。1年半ぐらいの間ずっとです。
転機の訪れと上達
しかし、私がある課題をトライしていて、なかなか完登できないでいる時、あるジムの上手い人が見てくれていて、指摘を頂きました。
「体幹をもっと使った方がよい」と言われました。体幹を使うとはどのようなのかと、詳しく聞いてみると、「なんというか背筋とピッっと伸ばして登る感じで、つまり、肩が自分の耳の位置より前にいかないような姿勢をキープする」とのことでした。
肩が自分の耳の位置より前にいかないような姿勢。これは、私にとっては、新しい概念でした。
これを実践すると、常に肩が前に出ないように引っ張らないといけないため、登っている時つねに肩を引く筋肉、背筋に力を入れている状態になります。
常に背筋に力を入れているのは、脱力して登れていないので、悪い登り方と考えていた私にとっては、全く異質ではじめ不思議に思いました。
脱力しないと、登っていてすぐ疲れてしまうのではないだろうか。力が常に入った状態で登ると、体に力が入った状態で柔軟な動きができずリーチなどが短くなってしまうのでは。などと思いました。
しかし、とりあえず、このうまい人も見ているし、言われた姿勢を意識して登ってみようと思いました。
スタートのホールドを持ち、いつもなら、だらっと脱力するのですが、今回はホールドを持った後、しっかりと肩を引きました。いつもよりも、確かに違うところに力を使うので、違和感はもちろんありました。
肩を引く姿勢を維持しながらそのまま次の一手、また次の一手と登りました。いつもと違う筋肉が使われ、筋肉が背中の筋肉を中心に、体幹が緊張している状態です。
そして、ついに、できなかった核心部分にたどり着きました。
今回は出来るのかと思いました。登れないのは、保持力が足りないせいだ、と思っていたので、まあ無理だろうと、思いました。
しかし、次の一手が。届くのです。簡単に。ものすごく近いのです。
すっと、そのホールドをとり…、完登しました。
かなりあっけなかったです。今まで、なかなか保持できず、「保持力ないことを恨むわ」とか、「他の人は保持力あっていいなぁ」とか、「保持力トレーニングをもっと強化せねば」とか、考えていました。
この課題を完登するには、もう数週間が必要。こう考えて、完登を遠い目で眺めていたのにです。
それなのに、「肩を引く」姿勢をしただけで、クリアできたのです。
保持力も、筋力もなにもアップしていないのに、遠い目で見ていた完登ができました。不思議なものです。
登るときの正しい姿勢とは
肩を引くことによって、その引いた距離の分だけ上半身の位置が高くなり、次のホールドに近くなったのです。それによって、簡単にホールドつかむことができました。
そのやり方を教わった人に「なんか、…できました。。ありがとうございます!」と言い、「今まで脱力するのが良いと思っていたんですよね。」と伝えました。
その人も「自分も前はそう思ってて、でもうまい人に肩を引くのが良いと教わったんだ」とのことでした。
肩を引くと上半身の位置は高く保てるし、肩を引く筋肉は背筋とかの体の中で比較的大きな筋肉を使うから疲労しにくいし、良い姿勢なんだということを学びました。
それを実践して、かなり傾斜のきつい壁で試してみましたが、次のホールドが近い近い。以前までは大きく振ったりしてつかんでいたものが、普通に手を伸ばすだけで届く距離に!
これは、ルーフを登ったりするのにも良いのだろうと、思いました。
現在は、肩を引くことをしてこなかったので、十分な筋肉が備わっていないですが、これからこのような登り方をすることで自然と肩を引く筋肉を鍛えていくことができると思いました。
そして、クライマーの憧れの広い背中になっていくのかな思いました。この登り方だから、背中が広くなるのかと。なるほどと。