最も弱い環の法則を生かしたトレーニング方法
chain / Sheila in Moonducks
別の記事「1つ上のレベルに達するためには -最も弱い環の法則-」でも書きました。
複数の環によって連結されたチェーンは、全体のチェーンの強度は、一番弱い環の耐久性に依存してしまいます。
これと同じように、クライミングも同じように考えます。ルートの中のある一つのムーブができないだけで、たとえ、その他のムーブが全てできたとしても、そのルートは完登できないということです。
つまり、既にできることをトレーニングするのではなく、出来ないこと・苦手なことをトレーニングすることによって、上達することができるという話です。
私は実際にこの「最も弱い環の法則」を生かしたトレーニングをしています。
メリットがいくつかあるのでお話します。
効果がダイレクトに得られる
自分の苦手な部分のみを重点的にトレーニングします。ですので、もちろんその苦手が克服されます。
苦手なムーブが、得意に。得意にならないとしても、何度も反復して練習することによって、慣れます。慣れによって、そのムーブに出くわしたときの、精神的な恐怖心がなくなります。
時間の節約ができる
私の場合、この法則を知る前までは、総合的に身体を鍛え、ムーブを鍛えるようにしていました。
例えば、筋トレの場合。当時は、腕立て、懸垂、デッドハング(前腕、保持力)、ハンギングニーレイズ(腹筋)、スタビライゼーション(体幹トレーニング)を行っていました。
ムーブに関しては、ジムで登るときには、ルーフからスラブまで、全ての角度の壁をまんべんなく登るようにしていました。
総合力が大事であると考えていたためです。ですが、これでは非常に時間がかかってしまいます。
いろいろな種類の筋肉やムーブを同時進行でトレーニングしていくため、自分が本当に苦手なことに対して時間を割くことができなくなります。
苦手なことのみをトレーニングしていけば、苦手が解決します。その後に、また登っていく中で、新たに発見する苦手項目をトレーニングしていくようにすれば良いと思います。そうすれば、時間的に最短で、上達することができます。
得意なことはトレーニングしなくても、結構得意なものです。これは、既にレベルの高い状態にあると考えてもよいです。
しかし、苦手なことは苦手です。練習したくないし、避けがちです。これをトレーニングすると、自分の技術の一番底辺部分が底上げされます。そのことによって、グレードもアップします。
回復が早くなる
無駄な筋トレは一切しません。必要な筋トレだけ行うようにします。
上にあげたように、身体の様々な部位を筋トレすると、それだけ回復が必要です。背筋を鍛えれば、背筋を回復させなければいけません。スクワットをしたら、ももの筋肉を回復させないといけません。
回復させるためには、もちろんエネルギーを使いますよね。身体の代謝が利用され、食物から取った栄養が使われます。
より多くの部位を回復させるためには、より多くの代謝と栄養が必要になるのです。
身体の代謝能力や栄養のマックスは100です。若い10代、20代ならトレーニングによってマックスを押し上げることができるのかもしれません。ですが、30代以上ともなると、頭打ちです。ですので、100以上になりません。
ですから、その100を効率的に使っていきましょうという話です。
無駄にいろんな部位を鍛えてしまうと、例えば、
・腕立て〔30〕 ・懸垂〔40〕 ・デッドハング(前腕、保持力)〔10〕 ・ハンギングニーレイズ(腹筋)〔10〕 ・スタビライゼーション(体幹トレーニング)〔10〕
マックスの100を、各部位の回復に振り分けました。
しかし、例えば苦手項目だけに重点を絞った場合はどうなるでしょうか。
・デッドハング(前腕、保持力)〔100〕
ですよね。前腕の回復に100をまわすことができます。おのずと、回復が早まりますし、高い超回復が見込めると理解することができます。
フレッシュな身体、マインドでトレーニングできる
多くのことをトレーニングしようとすると、後半になってくるほど疲れてきます。飽きてきます。
身体はよれ、気持ちは弱くなってきます。
しかし、苦手のみを鍛えることによって、フレッシュな身体、マインドでトレーニングできるようになります。
瞬発力(パワー)のためのトレーニングや、ムーブのトレーニングは特に、フレッシュな身体とマインドが必要です。
キャンパスボードのトレーニングをみてください。あれはフレッシュな身体、マインドの状態でやると、よくプロの方などが答えているのをみます。
キャンパスボードも、瞬発力を鍛えるものなので、フレッシュさが必要なのですね。
ケガが減る
無駄なトレーニングをしないことイコール、ケガが減ります。
必要なことだけをトレーニングすることによって、マックス100の回復力を、鍛えた部位にまわすことができます。これによっても、ケガ防止になります。
また、フレッシュさをもってトレーニングできるので、「疲れ切った身体で無理をして関節を痛めた」というようなことがなくなります。
この法則を念頭に置いたトレーニングはいいこと尽くめです。特に、身体の代謝能力、回復力が頭打ちになっている30代以降のクライマーにはおすすめです。